売り言葉にラブを

コピーライターなんですが、言葉と女心について語りつつ、本やマンガやアニメのことも

キャッシュレス社会になってもお賽銭は現金がいい

キャッシュレス社会が来るそうである。

中国や北欧は特に進んでおり、日本に旅行にきた人たちが、エッ現金が必要なの?!と驚くそうだ。

日本は現金主義が根強く、世界の潮流から乗り遅れている。このままでは、ガラパゴス化してしまう。もっとキャッシュレス社会にしなくては!と頑張っている各方面からは、クレジットカードはもとより、電子マネーおサイフケータイ、それにQRコード決済とか、いろいろなサービス提供が目白押し。政府も、企業の生産性の向上につながると、国を挙げてキャッシュレス社会の普及を目指すらしい。現金がなくなる日も近いのかなあ。

ますます、お金が幻に思えてくる。目に見えないけど、どこかにあって、好きなものに変えられる、万能のただの数字。不思議だ。

結婚のお祝いとか、お香典とか、お年玉とか、旅館で仲居さんに渡すお心付けとかはどうするんだろう。ご祝儀袋やポチ袋はなくなってしまうのかな。

結婚式やお葬式では受付でスマホを出して「3万円でお願いします」とか言ってスマホで支払うんだろうか。日本のことだから、そういうときは画面に水引が出たりするのかな。

神社のお賽銭は、ガランガランって鳴らす大きな鈴の下にiPadが置いてあって、みんなそこに自分のスマホを出して思い思いの金額を読み取らせたりするのかな。駄菓子屋でも、子どもがスマホをかざすんだね。

あらゆる驚きが、数年すると常識になってしまうから、いま胸にある違和感はそのときになったらきれいさっぱり消えてしまって、私も躊躇なく何にでもスマホやカードをかざしているんだろう。

この間、区役所の相談窓口で働いている友達とご飯を食べたのだが、そのときに様々な状況に陥っている女性の話を聞いた。

DVで相談に来た女性の話なのだが、夫からカードを1枚だけ渡され、現金というものを1円ももらえないという。望まない、無理やりのキャッシュレス生活である。

ほとんどのスーパーやコンビニなどでカードが使えるので、大丈夫じゃないかと思う人もいるかもしれない。でも、ことはそんなに単純なことではない。カードを持たせるのは、妻が使った明細を逐一チェックすることが大きな目的で、常に使い過ぎであると怒られ、それがDVに繋がるというのだ。こういう目に遭っている人が、最近結構いるらしい。

子どもに、「これで好きなお菓子を買っておいで」って百円玉ひとつ渡せない。そんな生活を、思い浮かべただけで胸が苦しくなる。

キャッシュレスは便利だと思う。ポイントも貯まってお得だし、私もきっと使うと思う。でも、誰かに見張られたり、使い道が全部どこかに垂れ流され、利用されるのは絶対にイヤだ。

500円玉貯金は貯まっていくのが目に見えて楽しいし、お年玉はかわいいポチ袋にお金を入れて渡したいし、お賽銭はご縁がありますようにと50円玉と5円玉を賽銭箱にチャリンと入れたい。日本には、現金が流通する余地を、少しでいいので残してほしいと思うがダメなんだろうか。