売り言葉にラブを

コピーライターなんですが、言葉と女心について語りつつ、本やマンガやアニメのことも

魚屋の小菊とレモン

うちから自転車で5分ほど行ったところに商店街があり、そこにある小さな魚屋のお刺身がおいしい。週に1度は買いに行くのだが、その度に思うことがある。ムダが多いのだ。

大根のツマの量が多い、多すぎる。そして、わさび、小菊や櫛形に切ったレモン、シソの穂までついている。その上、ご丁寧に保冷剤まで上にのせてくれる。

いらん。全部いらん。

ここのお刺身はおいしいのだが、少し高めの値段設定であり、これらのいらんもんを全部廃止してくれたら、きっと100円は安くできるのではないかと思うのだ。

商売熱心で、良さそうなおばちゃんおっちゃんがやっていて、大変好ましい店なのだが、行くたびにこのムダが残念でたまらない気持ちになる。

多分、うちの母親とかだと「この保冷剤いらんし、ちょっとまけてんか」と平気で言うんだろうな。私は修行が足りないので、そんなことは言えない。

こういう時に思うのは、関東では誰も値切らないんだなあということだ。

関西だと絶対に、おばちゃんが「タコとマグロとイカまでこうたんやから、イカはタダやな」とか言い、店のおっちゃんは「かなんなあ。えげつないこと言うわ。しゃあない、ほな100円まけとくわ。奥さんだけやで」などと言いながらのねちっこい買い物シーンが繰り広げられるはずだ。

しかし、こちらの店では客は「これとこれ」と静かに注文し、店のおっちゃんはそれを整然と計算し、客は言われたがままの金額を払い静かに帰ってゆく。

いや、その方が早いし、全然いいんだけど。

どちらかといえば、母をはじめ関西丸出しのおばちゃんがわあわあと店先で値切る姿を、めんどくせえなあと白い目で見ていたし。

だが、この魚屋にかぎっていえば、このような値切るおばちゃんたちがいれば、小菊とレモンはやめて値を下げていたはずだと、私は思うのである。