売り言葉にラブを

コピーライターなんですが、言葉と女心について語りつつ、本やマンガやアニメのことも

道徳ピル?!

「道徳ピル」。この話はかなり衝撃。

gendai.ismedia.jp

飲むと道徳心が向上する薬を人類が服用することで、人種差別やテロなどを防ごうというものらしい。

すでに多くの実験で、効果が実証されていて、一部の科学者は、世界中で飲むことが義務化されるべきと言っている。

今まで、教育で道徳心を向上してきたが、効果が思うようには上がっておらず、現実に紛争やテロが止むことはない。だから、科学技術の力で人間の本性を改善(改造)しようという考えで、「モラル・エンハンスメント」と呼ばれているそうだ。

本当に薬を飲むだけで、人は考え方や性格を変えられるんだろうか。

「薬剤の影響で必要な感情的反応が全般に鈍くなるなどの副作用も確認されている」とも書いてあるので、改善されるとしてもぼーっとしたメリハリのない人間が増えそうな気もする。

協調性は高いが人のことばかり気にする人が増えて、「今日、ごはんどこ行く?」みたいな時に全員が「私どこでもいいですー」って言って決まらなそう。争う気持ちがないから、スポーツとかは廃れるのかなあ。

「道徳ピル」を題材にすれば、いくらでもSF小説ができそうだ。

たとえば、法律で飲むことが義務付けられたとして、一人だけこっそり飲まずにいた人が、すごい独裁者になって薬を飲まない好戦的な戦士を育て、従順に飲んでおとなしい性格になっている国民を虐げていたところ、それに反旗を翻して結局戦争になったりとか。

飲む派と飲まない派で戦争になったり、先進国は飲むけど薬を飲んだ方が良さそうな後進国では予算がなくてちゃんと薬がいきわたらなくて、かえってテロが激化したりとか。

ダメだ。考えがポジティブな方にいかない。どうしても、世界中で人類が薬を飲んでボーッとしている映像しか浮かばない。

ハッ!そうだ、これはまさに伊藤計劃さんが書いた「ハーモニー」の世界。

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 

大災禍を経て、誰もがやさしく健全で健康で平和で美しい世界を築き上げた日本。あらゆる病気は駆逐され、国民に配布されたメディケアが、肌あれすら感知し、食べるもの、運動すべてを指定する。そんな世界に嫌気がさした3人の少女がいて・・・これは2008年、ちょうど10年前の本。

残念ながら、伊藤計劃さんはこれを書いた翌年、34歳の若さで長い闘病の末に亡くなった。もし、生きていて「道徳ピル」の存在を知ったらなんと言うのだろう。ああ、これを題材に本を書いてほしかった。読みたいー。