貧乏コンチクショウ
「林芙美子 貧乏コンチクショウ」展を世田谷文学館に見に行った。ずっと、見に行きたいと思いながら、結局最終日になってしまった。
林芙美子といえば『放浪記』とそこに書かれた「花のいのちはみじかくて苦しきことのみ多かりき」が有名だが、腹わたから絞り出したようなパワフルな詩がいっぱいあって、言葉がグイグイ迫ってくる。
今回の展覧会では、詩や文章が大きな文字で壁に展示、さらそれを小さな紙に書いた「コンチクショウカード」というものが置いてあり、持って帰れるようになっていた。これはすごくうれしい。
今回の展覧会は、林芙美子の言葉を現代の私たちへのメッセージ“幸福に生きるための処方箋”と捉えているそうで、「コンチクショウカード」はその処方箋。全部で20枚だが、どれもこれもぐっとくる。
たとえば
「さあ男とも別れだ泣かないぞ!
しっかり
しっかり
旗を振ってくれ
貧乏な女王樣のお帰りだ」
「燃えろ!
燃えろ!
それ火だ火の粉だ
憂鬱を燃やせ!
真実の心は火花だ心だ!
馬鹿にするな
馬鹿にするな
貧しくっても
生きるのだ!」
「明日の日に困っても
私はまだ私全部を投げ出したくはない
ころがしよう一ツでサイの目だって
一と六との勝負があるではないか」
この展覧会、何かに迷い悩んでいる女性はぜひ!と言いたいところだが、今日で終わり。残念です。
個人的には、林芙美子さんの建てた家が素敵で興味深かった。「何よりも、愛らしい美しい家を作りたいと思った」といって女手一つで建てた家だ。茶の間が可愛かったな。たくさん棚や引き出しがあって。
48歳の若さで、寝室兼書斎で持病の心臓病で亡くなったのだが、流行作家となり猛烈に忙しくて持病が進行したようだ。
貧乏と戦い続け、同性の女流作家を傷つけ蹴落とすようなことも相当したらしい。そうやってすべてを手に入れた、短く凄みのある一生だ。
「コンチクショウカード」だが、家について車から降り、荷物を下ろそうとしたとき、誤って手から落としてしまった。強風でバーッと飛び散る白い紙。ああ、コンチクショウ!言葉がアスファルトの道路に舞い散る様は、まさに林芙美子だったなあ。